乳児湿疹とは、1歳未満の乳児に多く見られる湿疹のことです。
乳児湿疹のなかでもよく見られる『乳児脂漏性湿疹』は、顔や頭皮、首など皮脂の分泌が多い部位に生じやすく、赤い小さな湿疹が散在し、うろこ状の黄色いかさぶたやフケのような塊が皮膚に付着するのが特徴です。
一般的に痛みやかゆみを伴うことは少ないですが、皮膚に炎症が生じた部位に二次的な細菌感染などを生じると、痛みやかゆみが生じて機嫌が悪くなる、哺乳量が少なくなる、皮膚を掻きむしるといった症状が現れることもあります。
乳児湿疹の多くは、入浴時に顔や頭皮、首など皮脂の分泌が多い部位を泡立てた石鹸で丁寧に洗うなど、皮膚を清潔に保つことで自然に改善していきます。また、皮膚に付着したかさぶたやフケのような塊は皮脂が固まったもので、入浴時などによくふやかしてガーゼなどでやさしく拭き取ると剥がれます。
しかし、これらのセルフケアを入念に行っていたとしても症状が改善しない場合は、皮膚の炎症を抑えるステロイド軟膏や乾燥を予防するワセリンなどの塗り薬による治療を要します。
乳児湿疹は繰り返す疾患ですが、1歳までには多くの方が良くなります。
家族にアトピー性皮膚炎の方がいたり、1歳を過ぎても皮膚炎が続いている場合はアトピー性皮膚炎の可能性も考える必要があります。
とびひは、正式には「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」と称し、皮膚への細菌感染によって発症し、人から人へとうつる疾患です。特にアトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚のバリア機能が低下しているため、とびひにかかりやすいので、要注意です。
掻きむしった手を介して、水ぶくれがあっという間に全身へと広がる様子が、火事の火の粉が飛び火する様に似ているため、「とびひ」と呼ばれます。
とびひには、水ぶくれが生じる水疱性膿痂疹と、かさぶたができる痂皮性膿痂疹の2種類があり、それぞれの特徴は下記のとおりです。
膚にできた水ぶくれが、だんだん膿をもつようになり、やがて破れると、皮膚がめくれてただれてしまいます。
痒みがあり、そこを掻いた手でほかの場所を触ると、症状が体のあちこちに広がってしまいます。とびひの多くはこのタイプで、主な原因は黄色ブドウ球菌です。
皮膚の一部に膿をもった水ぶくれ(膿疱)が生じ、厚いかさぶたになります。
炎症が強く、リンパ節が腫れたり、発熱やのどの痛みを伴ったりすることもあります。
主に化膿レンサ球菌が原因となりますが、黄色ブドウ球菌も同時に感染しているケースが少なくありません。
びひでは原因菌の特定のため細菌培養検査を行い、主に抗菌薬の外用や内服で、細菌を退治します。
何より患部を清潔に保つことが重要ですので、石鹸でしっかりと患部を洗い、シャワーなどできれいに流すようにしましょう。
また、必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬、亜鉛華軟膏なども用い、痒みや炎症を抑えます。とびひは、ひどくならないうちに治療を始めると、より早く治せます。
水いぼは、正式には伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)と言い、伝染性軟属腫ウイルスによる皮膚感染症です。
幼少児によく見られ、痒みを伴うことが少なくありません。
特に乾燥肌やアトピー性皮膚炎のある患者さんに多く見受けられます。その理由としては、乾燥肌やアトピー性皮膚炎があると、皮膚の「バリア機能」が低下するため、細かなキズからウイルスが入り込みやすいことと、痒みで引っ掻くことにより、爪先からうつってしまうことなどが考えられます。
プールでよく感染しますが、水から感染するというよりも、皮膚どうしの接触やビート板の共有が感染の原因となるようです。
専用のピンセットで一つずつ摘まみ内容物を出す方法や貼り薬を一つずつに貼付して時間をかけて取っていく方法があります。水いぼは1~2年で自然治癒するため、症状がなかったり数が多すぎる場合は自然に治るのを待つことも多いです。
手足口病は、口の中や、手足などに水疱性の発疹が出る感染症です。子どもを中心に、主に夏季に流行します。コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどの感染によって起こります。
感染経路としては、飛沫感染、接触感染、糞口感染(便の中に排泄されたウイルスが口に入って感染すること)などが知られています。
特に、この病気にかかりやすい年齢層の乳幼児が集団生活をしている保育施設や幼稚園などでは集団感染が起こりやすいため、注意が必要です。
症状としては、感染してから3~5日後に、口の中、手のひら、足の裏や足背などに2~3mmの水疱性発疹が出ます。
発熱は約3分の1に見られますが、ほとんどはあまり高くなりません。多くは、数日のうちに治ります。
手足口病に特効薬は無く、特別な治療法はありません。
経過観察をしながら、症状に応じた治療を行います。
症状は軽いことが多いのですが、稀に髄膜炎や脳炎など中枢神経系の合併症などが起こる場合がありますから、高熱が出る、発熱が2日以上続く、嘔吐する、頭を痛がる、視線が合わない、呼び掛けに応えない、呼吸が速くて息苦しそう、水分が取れずにおしっこが出ない、ぐったりしている、などの症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
りんご病は、両ほおに紅斑が生じることを特徴とし、幼児・学童に多い急性ウイルス性疾患です。
ほっぺが、りんごのように赤くなることから、よくりんご病と呼ばれますが、正式には伝染性紅斑と称します。
りんご病の原因は、ヒトパルボウイルスB19というウイルスです。
学童期(6~12歳)にかかることが多く、冬から春にかけて、保育施設や学校で流行します。
接触・飛沫感染すると考えられていますが、発疹が現れた時には、もう伝染力は無いと言われます。
症状としては、はじめに風邪のような症状(発熱、筋肉痛、倦怠感)が出て、しばらくすると両ほおが赤くなり、その後、腕や太ももに発疹ができます。発疹は、はじめはポチポチとした斑点のようですが、だんだんと中心部が薄く、まわりを赤く縁取ったレース模様のようになるのが特徴です。
この原因ウイルスに対する特効薬はありません。必要に応じて、抗ヒスタミン薬や鎮痛剤による対症療法を行います。予後は良好です。